以前、ChatGPTとClaude Codeの両方に課金している理由を聞かれて、答えに詰まったことがある。「便利だから」としか言えなかった。
そのときは、質問した相手が納得していないのが分かった。当然だと思う。「便利だから」は理由ではなく感想だ。2つのサービスに毎月払い続けているのに、その使い分けを一言で説明できないというのは、要するに自分でも分かっていないということだった。
あれから数ヶ月、両方を日常的に使い続けてきた。今なら答えられる気がするので、いちど言葉にしておく。同じように「なんとなく両方使っている」状態の人には、判断材料になるかもしれない。
その前に、片方は名前だけでは伝わりにくいので簡単に説明しておく。ChatGPTは、チャット欄に質問を打つと答えが返ってくる、いわゆる対話型のAIだ。こちらは説明不要だと思う。
Claude Codeの方は、同じAIでも「自分のパソコンの中で作業をしてくれる」タイプだと考えてもらえばいい。会話に答えるだけでなく、ファイルを整理したり、決まった時間に決まった処理を勝手に走らせたりできる。もともとはプログラムを書く人向けの道具だが、自分はプログラミング以外の用途——メモの整理や、繰り返しの作業の自動化——に使っている。
この「答えを返すだけか、手を動かすところまでやるか」という違いが、以下の話の前提になる。
結論: 決まっていないときはChatGPT、決まったらClaude Code
先に結論から書く。自分の使い分けは、この一行に集約できた。
不確定要素が多いものはChatGPT。方向性がある程度固まったらClaude Code。
意識して決めたルールではない。今回あらためて自分の使い方を振り返って、後から言葉にしたらこうなった、という順番だ。だから他人に勧められる「正解」ではなく、あくまで自分の場合の話として読んでほしい。
なぜその分かれ方になるのか
理由は、2つのツールが要求してくる情報の量が違うからだと思う。
ChatGPTに向かうときは、まだ形になっていない。「こういうことがしたい気がする」「この単語、正確にはどういう意味なんだろう」という、輪郭のない状態から始まる。
自分が実際に投げているのは、たとえばこういう質問だ。
- 「〇〇という単語の意味を教えて。文章の中でどう使うのか、例文もいくつか出して」 — 意味だけ調べても使い方が分からない言葉は多い。例文まで出してもらうと、自分の文章に落とし込める。
- 「このニュースに出てきた〇〇について、関連するニュースも含めて深掘りして」 — 気になった単語が出てきたとき、その1本の記事だけでは背景が分からない。周辺を横断的にさらってもらう。
- あとは単純に雑談と、アイデアの壁打ちにも使っている。
どれも共通しているのは、こちらが答えを持っていないことだ。何がほしいか自分でも分かっていない段階なので、対話しながら少しずつ削っていく必要がある。
一方、Claude Codeに向かうときは、やることが決まっている。「この作業を自動化したい」「このリマインドを毎週動かしたい」「散らかったTODOを整理したい」。やりたいことが具体的に言える状態でないと、そもそも指示が書けない。
つまり自分は、考えを固める工程と、固まった考えを実行する工程で、道具を持ち替えていたことになる。同じ「AIに聞く」でも、前者は相談で、後者は依頼だ。役割が重なっていないのだから、片方で済まないのは当たり前だった。
失敗して学んだ境界線
この境界線に気づいたのは、実際に踏み越えて失敗したからだ。
調べ物のリマインドを、ChatGPTにやらせようとしたことがある。「毎回この時間にこれを思い出させて」という設定をした。結果はどうだったかというと、自分がChatGPTを開いてアクションを起こして初めて、リマインドが出てきた。
これでは本末転倒だ。リマインドは「自分が忘れていても向こうから来る」ことに価値がある。自分が思い出して開かないと動かないなら、リマインダーとして機能していない。
誤解のないように書いておくと、これは「ChatGPTには自動で通知する機能がない」という話ではない。自分が設定したやり方では、そういう動き方にならなかった、というだけだ。設定を詰めれば解決したのかもしれない。
ただ、その時点で自分は「設定を詰めないと自動で動かない道具」と「自動で動かすことが前提の道具」を、手元に両方持っていた。だから詰める方向には進まなかった。
このとき「自動で動くこと」と「聞けば答えること」はまったく別の能力なのだと分かった。ChatGPTは後者が非常に強い。逆にClaude Codeは、やってほしい手順を書いて「毎週月曜の朝に実行して」と時間を指定しておけば、自分が寝ていても動く。
失敗した結果として、境界線がはっきりした。「自分が話しかけないと始まらないもの」と「自分がいなくても進むもの」。この2つを混ぜようとして失敗した、というのが実際のところだ。
3つ目の使い方: 答え合わせ
ここまで「相談」と「依頼」の2つで説明してきたが、実はもう1つある。両方に同じことを聞いて、食い違ったところを疑うという使い方だ。個人的には、これが両方に払っている一番の実利だと思っている。
なぜそんなことをするのかというと、AIの答えには、もっともらしい嘘が混ざることがあるからだ。これは特定のサービスの欠点ではなく、今のAI全般の性質で、ChatGPTでもClaude Codeでも起きる。
片方だけを使っていると、返ってきた答えが正しいのか間違っているのかを判断する足場がない。全部を自分で確認するしかなくなる。ところが2つに同じ質問を投げると、一致した部分と食い違った部分に分かれる。食い違ったところだけを重点的に確認すればいいので、確認の総量が減る。
実際に食い違いが出たこともある。ChatGPTに憶えさせておいた情報と、Claude Codeで作業をしている最中に取り込んだ情報とが、食い違っていた。細かい内容までは思い出せないのだが、「両方が同じことを言っている前提」で作業を進めていたら、そのまま気づかずに通していたと思う。
ただし、これは万能ではない。両方が同じように間違えることはあるし、一致したから正しいとも限らない。「両方が一致した=正しい」ではなく、「食い違った=ここは必ず確認しろ」という警告として使っている、というのが正確なところだ。
確認の手間がゼロになるわけでもない。どこを確認すべきかの当たりがつく、という程度の話だ。それでも、当てずっぽうに全部確認していた頃よりはずっと楽になった。
気になっている点も書いておく
良いところだけ並べても仕方がないので、それぞれ引っかかっている点を書く。
ChatGPT: 確認の手間が自分に返ってくる
調べる能力そのものは高いと思っている。ただ、上に書いた「もっともらしい嘘が混ざる」問題が、調べ物の道具としては一番痛い形で出る。まとめてもらった内容に事実でないものが混ざれば、結局こちらで元の情報源にあたって確認する作業が発生するからだ。
調べる手間を省くために使っているのに、確認の手間が戻ってくるなら、何のために使っているのか分からなくなる瞬間がある。この点は今も解消していない。
念のため繰り返しておくと、これはChatGPTだけの欠点ではない。ただ自分の場合、調べ物の入口にしているのがChatGPTなので、この問題に出くわす回数が単純に多い。だからここに書いている。
Claude Code: 前提知識のハードルがある
自分用の手順を登録して使い回せるようにしようとすると、安全面の配慮が必要になる場面が出てくる。
具体的には2つある。1つは「この手順に、どこまでパソコンを触らせるか」。ファイルを消す権限まで渡すのか、読むだけにするのか、といった線引きだ。もう1つは「ネットから拾ってきた文章を、そのまま指示として実行させていないか」。取り込んだページの中に「以下の操作をせよ」と書いてあったら、AIがそれを命令だと受け取ってしまう危険がある。
こういうことは、多少かじった経験がないとそもそも「気にするべき項目」として頭に浮かばない。自分は運良く引っかかったが、知らないまま進んでいたらどうなっていたかは分からない。ここは万人向けとは言いにくい部分だと思う。
Claude Code: 並行させると現在地を見失う
以前SNSにも書いたのだが、作業中に「あれ、今何してたっけ」となることが地味にある。
具体的にどういう場面かというと、途中で別のタスクを並行して走らせたときだ。複数の作業が同時に進むと、どのタスクがどこまで終わっていて、次に何をするはずだったのかを、自分の側で追えなくなる。
止まっているわけでも壊れているわけでもない。むしろ順調に進んでいるのだが、進んでいる場所が複数あって、全体像を持っているのが自分しかいない状態になる。これは道具の欠陥というより、並行させた自分の使い方の問題かもしれない。ログを振り返る仕組みの必要性を実感したのはこれがきっかけだった。
片方だけ残すなら、どちらか
意外に思われるかもしれないが、解約を検討したことがあるのはChatGPTの方だ。理由は上に書いた「確認が自分に返ってくる」問題で、調べ物の道具として信用しきれない場面があったからだ。それでも続けているのは、答え合わせの相手として効いているからにほかならない。
とはいえ、片方に絞れば答え合わせはできなくなる。それを承知の上で、もし片方だけにするとしたら、残すのはClaude Codeになる。理由は拡張性で、できることの幅を自分で広げていける点が大きい。
逆に言うと、ChatGPTはできることの範囲がはっきりしすぎている。これは短所ではなく設計思想の違いだと思うが、「こういうことがやりたい」と思いついたときに、その範囲の外だと別のサービスを探すことになる。そうやってサービスが増えていくと、今度は管理する対象が増える。一元管理が難しくなっていく未来が見えるので、切るとすればこちらになる。
ただし、これは**「今すぐ切りたい」という話ではない**。あくまで片方しか選べないという条件をつけられたら、という仮定の話だ。
誰に向くか、誰に向かないか
一番書いておきたいのはここだ。
ChatGPTだけで足りる人: 調べ物や、自分のアイデアの壁打ちが主な用途の人。抽象的な事柄を具体化していく作業が中心なら、これで十分だと思う。
Claude Codeが向く人: 日常的なタスクを自動化したい人。逆に言えば、自動化したい対象が具体的に思いつかないなら、宝の持ち腐れになる可能性が高い。
そして、両方に払うのは基本的に勧めない。 通常は片方をしっかり使えば、やりたいことは十分にできると思う。
自分が両方使っているのは、たまたま「考えを固める作業」と「固めた後に手を動かす作業」の両方が、日常的に同じくらいの分量で発生しているからだ。どちらか一方に偏っている人が真似をしても、片方が遊ぶだけになる。
「便利だから」から、どこまで進んだか
冒頭の問いに戻る。今なら、こう答える。
「どちらにも別の強みがあるから、特性に合わせて使い分けている」
正直に言えば、これも完璧な答えではない。「その使い分けにお金を払う価値があるのか」と重ねて聞かれたら、まだ胸を張って数字で示せる段階ではない。この費用を回収するための取り組みも、まだ始まったばかりだ。
それでも「便利だから」で止まっていた頃と比べれば、少なくとも自分が何にお金を払っているのかは説明できるようになった。答えに詰まった経験がなければ、たぶん言語化しないまま使い続けていたと思う。
同じ状態の人がいたら、次の3つを埋めてみてほしい。自分がやったのはこれだけだ。
契約中のツールの使い分けを言語化する3ステップ
- 直近1週間で、それぞれのツールに何を頼んだかを思い出して書き出す
- 書き出した内容を「決まっていないことを相談した」と「決まったことを依頼した」に振り分ける
- 片方に9割寄っていたら、寄っていない側は本当に必要か考える
3で偏りが出たなら、それが解約の判断材料になる。偏らずに両方使っていたなら、それが「両方に払う理由」そのものだ。
自分の場合は後者だった。ただ、それが分かったのは実際に書き出してみた後で、聞かれたその場では答えられなかった。説明できないのは、使っていないからではなく、振り返っていないからだったというのが、今回いちばんの発見だった。
関連: 使い分けを言語化する前は、AIへの依頼も丸投げだった。その手戻りをどう減らしたかはnoteに書いている。→ AIに丸投げして失敗する人がやっていないこと



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