体組成計に乗る習慣はついたのに、その数字を記録する習慣がつかなかった。
アプリを開いて手で入力する、というたったそれだけの手間が越えられない。数日は続くが、そのうち面倒になって止まる。止まると、それまでの記録も見返さなくなる。同じことを何度か繰り返して、「入力を自分でやっている限り、この習慣は続かない」という結論になった。
だったら自動で集めればいい。使っているのはタニタの体組成計で、測定データは「ヘルスプラネット」という同社の会員サービス側に溜まっている。そこから定期的に吸い出してくればいい。人の代わりに画面を操作してくれる仕組みを使えば、月に一度データを取ってくるところまで自動にできる。
理屈の上ではそれだけの話だった。実際には、動くようになるまでに8日かかった。しかも、その間ずっと疑っていた相手が間違っていた。
先に結論を書いておく。鍵は最初から開いていたのに、ドアノブの表示が読めなくて「閉まっている」と判断し続けていた。 開かないドアを8日間叩いていたようなものだった。
最初の診断は「ツールのバグ」だった
最初につまずいたのは、自動ログインだった。ユーザー名とパスワードの入力までは進むのに、その先へ行かない。しばらく待たされた末に通信が切れる。
何度やっても、同じ場所で同じように止まった。自分の書いたものをざっと読み返しても、おかしなところは見当たらない——今にして思えば、この「ざっと」が全てだった。
決定的に見えたのは、自分の手でクリックして同じ操作をすると、問題なくログインできることだった。人が押せば通る。プログラムから押すと落ちる。この非対称さを見て、「これは自分のせいではなく、ツール側の問題だ」という結論に落ち着いた。当面は自分で手動ログインしてから処理を走らせる、という回避策で運用することにした。
このとき自分は「未解決」「既知の不具合」とメモに書いた。書いた瞬間、その先を調べるのをやめている。
実際には、3つの別々の不具合が重なっていた
8日後に腰を据えて調べ直したら、まったく違う絵が出てきた。ツールのバグではなかった。 別々に発生していた3つの問題が、症状として重なって1つの大きな謎に見えていただけだった。

1つ目: 押すべきボタンが「ボタン」ではなかった
自動ログインの仕組みは、「画面にボタンが現れるのを待ってから押す」という作りになっていた。
ところがこのサイトの送信ボタンは、見た目こそボタンだが、ページの内部では別の部品として作られていた。仕組みの側は言われた通り「ボタン」を探し続け、永久に現れないものを待っていた。落ちたように見えていたのは、待ちぼうけの果てに通信が切れていただけだった。そもそも送信は一度も実行されていない。
対策は、探すべき部品を指定し直すだけだった。ツールの不具合ではなく、こちらの設定が足りていなかった。
2つ目: 成功を「失敗」と受け取っていた
自動ログイン自体は成功しているのに、こちらの仕組みが「失敗した」と受け取っていた。作業の結果を受け取る書き方が間違っていて、成否の判定材料が空のまま届いていた。空は失敗とみなす作りだったので、成功しても失敗になる。
3つ目: 文字化けが判定を壊していた
最後の1つが、いちばん気づきにくかった。
ログインできているかを、こちらは「画面に『ログアウト』という文字があるか」で判定していた。ログイン済みならログアウトのリンクが出るからだ。素直な方法に見える。
ところが画面を読み取るときの設定が抜けていて、日本語がすべて文字化けしていた。文字化けした画面の中に「ログアウト」という4文字は存在しない。だから、ちゃんとログインできている状態でも「切れている」と判定され続けていた。
手がかりはずっと出ていた。ログインに成功したときのメッセージが、先頭を 笨・ に化けさせた一行として、毎回そこに出ていたのだ。緑のチェックマークが化けるとこうなる。成功のしるしそのものが、読めない形で目の前にあり続けた。
冒頭に書いたドアの話は、これのことだ。鍵は開いていた。読めなかったのは表示のほうだった。
正直に言えば、文字化けは見慣れていたので、異常だと思っていなかった。 見慣れた異常は、異常に見えなくなる。
8日前の自分に言えること
8日前の自分に「本当にツールのバグか、自分の設定を全部見たか」と聞いたら、たぶん答えに詰まると思う。
手で押せば通るのに、プログラムから押すと落ちる。この一点を見つけた時点で、自分は納得してしまった。外に原因があると分かった気になった瞬間に、内側を調べる手が止まった。 実際には、3つとも自分の書いたコードと自分の登録内容の問題だった。
もう一つ効いたのは、「未解決」とメモに書いたこと自体だった。書いた時点でその項目は「調べ終わったもの」の側に移ってしまい、次に開いたときも「ああ、これは未解決なんだった」と読み飛ばすようになる。記録は本来あとで見返すためのものなのに、この場合は考えるのをやめた印として機能していた。
持ち帰れること
同じ形のつまずきは、自動化に限らず起きると思う。自分が今回から使うようにしたのは、次の2つだ。
1. 「未解決」「既知の不具合」と書いたものは、書いた本人を疑う
特に原因を外部(ツール・サービス・相手側)に置いた記録は、書いた時点で調査が止まっている可能性が高い。時間を置いてもう一度開くときは、結論ではなくそう結論した根拠のほうを読み直す。2. 「失敗した」と表示されているとき、本当に失敗したのかを疑う
今回は3つのうち2つが「成功しているのに失敗と判定される」タイプだった。失敗の表示は、処理が失敗したことではなく、判定が失敗したことを示している場合がある。 判定そのものを一度疑うと近道になることがある。
正直に書いておくこと
ここで「これで自動化が完成した」と締めたいところだが、まだそう言える段階ではない。
仕組みは組み終わり、手で動かして正しくデータが取れることは確認した。ただし月に一度の自動実行は、まだ一度も動いていない。 初回は来月だ。うまくいく見込みは立っているが、見込みと実績は別物で、それを取り違えたのがそもそも今回の8日間だった。動くはずだと思い込んだまま8日過ごした人間が、ここで同じ書き方をするわけにはいかない。
(2026年9月5日追記) その初回は、来なかった。何が起きたかは続編「体組成計の自動取得が、初回に来なかった話」に書いた。
もう一つ。8日という時間について。ずっと格闘していたわけではなく、回避策で運用しながら7日放置して、8日目に腰を据えて調べたら半日で解けたというのが実態だ。時間がかかったのは難しかったからではなく、「未解決」と書いて手を止めていたからだった。
そして、率直に言えば手で入力し続けた方が早かった。 月に数分の入力を消すために8日使っている。元が取れるのは数年後だ。それでもやったのは、続かない原因が根気ではなく手間の側にあると確かめたかったからで、時間対効果で選んだ道ではない。
記録が続かない人へ
記録が続かなかった原因は、自分の根気ではなく、続けるのに手間がかかる仕組みのほうにあった。 自分にとってはこれが一番の収穫だった。
ただし、その手間を消すのに今回のような回り道をする必要はない。ヘルスプラネットに限らず、体組成計とスマートフォンのアプリを連携させれば、乗るだけで記録が残る機種は多い。 手入力をやめるという目的だけなら、たいていはそれで足りる。自分が遠回りをしたのは、取ったデータを自分の手元に表形式のファイルとして置いておきたかったからで、目的が違えば道具も違う。
なお、使った自動操作ツールの名前と具体的な設定内容は、この記事では書いていない。 同じ手順が、自分以外のアカウントへ自動ログインする手がかりにもなりうるためだ。ここは読者の再現性より安全側に倒した。
もし今「記録が続かない」で止まっているなら、根気を出す前に、手間そのものを消す方法が既に用意されていないかを先に調べてみることを勧めたい。 自分はそこを飛ばして、自分で作る方から入ってしまった。


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