ブログを始めるとき、いちばん手間がかかるのはサーバーの設定だと思っていた。レンタルサーバー——記事のデータを置いておく場所を月額で借りるサービスのことだ——を契約して、ドメイン(サイトの住所にあたる文字列)をつなぎ、SSLという暗号化の設定を入れて、記事を書くための道具であるWordPressを置く。そのあたりで何日か潰れる前提で予定を空けていた。
実際にやってみたら、そこは同じ日のうちに終わった。代わりにお金を持っていかれたのは、契約の手前だった。決済が通らない。どのボタンから申し込めばいいのか分からない。そして、申し込んだ先が自分の思っていた商品ではなく、3年分の料金が一度に確定した。
自分が契約したのはロリポップ!レンタルサーバーで、ドメインは同じ会社のムームードメインで取った。どこが一番安いかという比較はしない。一社を使った人間の話として読んでほしい。
決め手は「安さ」ではなく「決済が通ること」だった
最初に候補にしていたのは、エックスサーバーだった。評判を吟味したわけではなく、調べたときにいちばん名前が出てきたところだ。
ところが、申し込みの決済が通らなかった。クレジットカードの本人確認(3Dセキュアと呼ばれる、カード会社側の追加認証)が何度やっても失敗する。その画面で選べたもう一つの支払い方法(後払い)に切り替えても通らず、ブラウザを変えても同じだった。原因は分からないまま、その会社は諦めた。
つまり自分は、その会社に用意されていた支払い方法を全部試して、全部外れたわけだ。ここで選定基準に項目がひとつ増えた。支払い方法がいくつ用意されているかである。手段が2つしかなければ2つとも外れることがある、という当たり前のことを、身をもって知ったからだった。
最終的にロリポップにしたのは、この基準で見たときに選択肢がいちばん多かったからだ。月額も当初の候補より低かったが、それは決め手ではなく、後から付いてきた条件だ。
正直に言うと、これは褒められた選び方ではないと思う。速度も、使えるドメインの幅も、自分はほとんど見ていない。見なかったというより、その手前で止まっていたので、見る段階までたどり着けなかった。
技術的な設定は、拍子抜けするほど早く終わった
契約したその日のうちに、ドメインの接続、SSLの設定、WordPressの設置まで終わり、同じ日に記事も公開している。身構えていたのが馬鹿らしくなるくらい、ここには詰まった記憶が残っていない。難しいのは設定だという前提は、少なくとも自分の場合は外れていた。
唯一つまずいたのは、記事に載せる図をSVGという形式のままアップロードできなかったことくらいだ。これはサーバーではなくWordPress側の仕様で、SVGは既定で受け付けない。PNGに変換して差し替えたら、それで終わった。
詰まったのは「どこから申し込むか」だった
ロリポップの公式サイトで「無料ではじめる」を押すと、「サービスを選ぶ」という分岐の画面になる。そこに、AIでサイトを作るサービスと、レンタルサーバーが横並びで置かれていた。左側が新着扱いで目立っていて、自分は左を選んだ。
選んだ先は、レンタルサーバーではなかった。
別の商品を契約していた
契約していたのは「ロリポップ!AIホームページ」という別の商品だった。気づいたときには、3年分の利用期間と、その料金2万円台がまとめて確定していた。
ここが自分の読み違えたところなのだが、この商品のお試し期間は「解約すれば無料で終わる」という意味ではなかった。お試し期間のうちに解約の操作はしたのに、規約には残りの契約期間分は返金しないと書かれていて、その通りになった。問い合わせもしたが、返金はできないという回答だった。
念のため書いておくと、これはレンタルサーバー側の対応ではない。同じ会社の別商品で、規約も申し込む前から公開されていたものを読まずに進んだ、自分の話である。
それでも、初めて契約する人間があの画面で左右を取り違えるのは、じゅうぶんあり得ることだ。券売機で隣のボタンを押すのと同じで、間違えたこと自体より、押すまで自分が何を買おうとしているのかを確定させていなかったことの方が問題だった。
特典が適用されなかった件
もうひとつ、小さいが引っかかっていることがある。
ドメインの費用がずっと無料になる特典があり、条件は満たしているつもりだった。だがムームードメインで取った分には適用されず、1,000円弱の取得費が請求された。設定を見直して画面を読み込み直してみたが、表示は変わらなかった。
金額が小さかったので、原因を突き止めるより払って先に進む方を選んだ。理由は今も分かっていない。条件の読み違いだった可能性も十分にある。
運用してみて分かったこと
契約から1か月半ほど経った。管理画面——サーバーやブログの設定をする画面のことだ——を開くのは週に一度くらいで、プラグイン(WordPressに機能を足す部品)の更新を確認して、閲覧数を見る。それで終わる。
速度が速いとか遅いとかは、体感できていない。障害の通知も、これまで一度も受け取っていない。サーバーについて何も考えなくて済んでいる状態が、一番いい状態なのだと思う。ただしこれは1か月半・小さなアクセス量での話で、負荷がかかったときにどうなるかはまだ分からない。
良かったことを挙げるなら、サーバーそのものの性能ではない。自分が書いたものが読まれたかどうかが、数字で観測できる形になったことだ。何となく続けている感覚と、週に一度数字を見る感覚は、続けやすさがまるで違う。
入れていない機能もある
迷惑コメント対策のプラグインは、まだ有効にしていない。コメントを受け付ける運用を始めてから入れるつもりでいる。有料のバックアップオプションにも入っていない。
これは「調べても分からなくて放置している」のとは違う。今の自分の運用には要らないと判断して、入れていない。必要になった時点で入れる。最初から全部盛りにしないと不安になる気持ちは分かるが、使っていない機能の料金は、そのまま毎月の固定費になる。自分の場合、AIのサブスクだけで固定費がどこまで膨らんでいたかを一度数えたことがあって、それ以来、月額のものを増やすときは手が止まるようになった。
これから始める人に、ひとつだけ言うなら
手順を細かく用意しておくことだ。
それも「WordPressの入れ方」のような後半の手順ではなく、どの商品を、どの画面の、どのボタンから申し込むのかを、申し込みを始める前に確定させておく方の手順である。自分が払った中でいちばん大きい無駄は、この1点から出ている。
具体的には、申し込みボタンを押す前にこの3つを紙かメモに書き出しておけば足りる。
- 商品名を正式名称で1つ(「◯◯レンタルサーバー」なのか「◯◯ホームページ」なのか。似た名前の別商品が並んでいる前提で書く)
- 申し込み後に課金が確定する期間(お試し期間があるか、解約したら残りは返ってくるか。規約の該当箇所を先に読む)
- 支払い方法を第2候補まで(第1候補が通らない前提で用意しておくと、自分のように会社ごと乗り換えずに済む)
サーバーを借りるのが向いているのは、自分のサイトやブログを立ち上げる予定が具体的にある人だ。その予定がまだない人が、いま急いで借りる理由は見当たらない。借りた時点から費用が発生して、置くものがなくても待ってはくれない。
ただ、ここまで読んで「自分には関係ない」で終わる話でもないと思っている。似た名前の商品が横に並んでいて、押した先で数年分の料金が確定する。これはサーバーに限った現象ではなく、保険でも通信でも通販の定期購入でも同じ形で起きる。定額のサービスで元が取れるかを考える前に、そもそも自分が何を契約したのかを取り違えていたら、その計算は始まらない。自分が3年分を払って手に入れたのは、サーバーの知識ではなく、申し込みボタンの手前で一度止まるという習慣の方だった。
もう一度ゼロから選び直すとしても、たぶん同じところにすると思う。理由も同じで、支払いが通るからだ。速度でも、機能の多さでもない。実際に使った人間の結論としては、それが正直なところになる。


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